里山の伐採

 

最近、10階建てのビルの高さほどのクヌギとカシの木が五本伐られた。

そこは山の斜面で、その斜面を囲むように急な坂道が曲がる。昼なお薄暗く林間にはシイタケのほだ木が並び小鳥が枝を渡る。木の幹は両手に余るまで太くなっていた。

 道行く人は見上げて「伐らにぁ、あぶねぇで」と、倒れた時の惨事を想像して顏を曇らせる。このような立ち話が毎年のように繰り返されていたが、枝が電話線と交差しているのを見た人が、「NTTに言うてみんさい」と言った。

斜面の地主は数日ためらったあげく電話をかけたところ、事態は一転した。数時間後には三人がやってきて山に入ると、白いリボンを幹に巻きつけ、携帯電話を構えてと木の橫に人を立たせて写真を撮った。伐採の業者に見せるのだという。そして三日後には、クレーン車とチェーンソーがやってきて斜面にとりつくと、次から次へと木を倒し巨木はあっという間に細切れの材木になった。成長しすぎた木の処置に苦慮していた住民は、澱のように積もった心配事が流れてゆくような表情を見せていた。

里山の荒廃が言われて久しいが、伸びすぎた木は人の力ではどうすることもできない。代わってNTTが里山を救ってくれたのだ。